シリア空爆成果の裏側で静かに崩れ始めたロシアの経済事情

ロシアによるシリア空爆の顛末

ロシアのプーチン大統領は9月末に行われた政府幹部との会議で、「シリアのアサド大統領からの要請を受けて、あらゆる国際法に従って対テロ作戦を行う」ことを決定しました。
実施する作戦内容は期間を限定した空軍・海軍による空爆だけに限り、特殊部隊や陸軍の派遣などの地上部隊による介入は行わないと明言しました。

空爆実施直前の国連総会で行なった演説の中でプーチン大統領は、

  • アサド政権は正統な政権であり、シリア問題は政権を通して解決するべき
  • ISIS = ダーイッシュは国際社会に対する敵であり、この認識を共有する諸国と協力する

ことの2点を強調して、空爆実施の正当性と訴えました。

確かにISISは中東地域だけではなく、欧州諸国にもテロ攻撃を始めるなど、欧米社会に対する大きな驚異ですが、現時点ではロシアへの直接の脅威とはなっていません。
それでは何故、この時期にロシアはISISへの攻撃を口実にシリアへと軍事介入をはじめたのでしょうか。

なぜロシアはシリアに軍事介入をしたのか

実はシリアには旧ソ連圏外で唯一のロシア海軍基地が存在しています。この基地は資源地帯として重要な中東地域や交通の要である地中海に対して、ロシアの軍事的影響力を確保する上で欠かせない拠点ですが、2011年に生した中東諸国の民主化を求める「アラブの春」をきっかけとして酷い内戦状態へと陥っています。

アメリカをはじめとする国際社会は民主化を求める武装勢力側を支援していますが、主要国の中でもロシアはアサド政権側を支援します。
各種兵器を借款で供与したものの、シリアからの代金返済がほとんど済んでいないため、現時点でアサド政権が崩壊すると多額の借款を踏み倒される懸念があります。
ロシアほどの大国がなぜ中東の独裁国家に貸しつけた借款の踏み倒しを心配するのでしょうか。これには2015年に入って急速に進んだ資源価格の下落、特に原油価格の急激な低下が大きく影響しています。

求心力回復を狙うプーチン大統領による介入決定

資源輸出国であるロシアは、原油価格の高騰を背景に収入を増やし、プーチン大統領の掲げる「強いロシア」に向けて軍機構の改革など、様々な施策を行なってきました。
しかし中国をはじめとする新興国経済の減速による需要の急減と、アメリカで起こったシェール革命による原油産出量の増大というダブルパンチにより原油価格が急落。更に性急な改革に反発する保守派の巻き返しによる改革の停滞など、「強いロシア」の象徴であったプーチン大統領の求心力に大きな陰りが見えるようになりました。

求心力の落ち込んだプーチン大統領は、国ではなく国外に目を向け、折よく混乱状態に陥っていたシリア問題に介入することで、求心力の回復と資源供給地帯を握ることで価格安定を狙います。
そのためにこれまでアサド政権とシリア反体制派勢力の対話を仲介するなど、和平努力をしてきましたが、ことごとく失敗に終わり、プーチン大統領は追いつめられることとなります。
今回の空爆は問題となっているISISに加えて、アサド政権に抵抗する武装勢力の拠点も攻撃するショック療法を行うことで問題の解決を図り、落ちこんでいるプーチン大統領の求心力と影響力を回復させる意図があるのかもしれません。

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