世界的不況から見るアメリカの軍事的後退

アメリカ軍人

世界的な不況がパワーバランスを崩すというたった1つのシンプルな事実(極東アジア編)

サブプライムローン問題で約束された生活を謳歌するはずだった米国民が、抵当に出されたマイホームを見て大きく失望する様をテレビで見たという人も少なく無いであろう。

リーマン・ショック以降、アメリカの景気後退はそのショックを抱えるように進んでいる。
2008年9月を発端としたこの事件から3年後、2011年には米国債の格付けが下がるなどアメリカの金融的健康は大きく揺さぶられ、同年を頂点とした高い失業率は8%から5%へと年々下がってきているものの、イラク戦争を皮切りに対テロ戦争による疲弊感もあり、国民の疲れは慢性的なものへと変化してしまった。

このことから世界に派兵する「強いアメリカ」が内部から崩壊し始めている。それが顕著となっている問題が2016年の在韓米軍撤退であろう。
韓国側は強硬な手段をちらつかせるどころか、時々実力行使にも出る北朝鮮の暴発を抑えたいと思っているため、一般国民の思惑は別として政府は米軍に抑止力として駐屯してもらいたいという考えは依然として残っている。
今になって韓国政府は米軍に対して引き止めを図っているものの、アメリカ側はこれを拒否し、予定通り2016年に撤退するとしている。

民主党のカーター政権時代以降、段階的に兵力の引き上げは行っているものの、それに比例して38度線の緊張状態が緩和することはなかった。
それどころかこの50年で北朝鮮は事実上、核兵器を保有するなど事態は朝鮮戦争の真っ只中よりも悪化している。
2016年、米軍が完全に撤退が完了した場合、韓国軍の兵力だけでは北朝鮮の侵攻を押し戻すのは困難なものになるだろう。
兵器の世代が北朝鮮よりは新しいとはいえ、韓国軍の常備軍でも約65万人。朝鮮人民軍はその約2倍の120万人であることから、戦略的には韓国軍が不利な状況にある。

また経済状況も芳しくない。
韓国は世界的に有名なSamsungがあるものの、先進各国から見れば、大黒柱となっている企業が1つしかないため、Samsungがうまく立ち行かなくなると、国内の経済情勢に陰りが出てしまうというもろさがある。
今まさに、スマートフォン事業の頭打ちにより韓国経済は後退の一途を辿っており、アメリカから見ても保護するべきか判断に迫られている部分もあるだろう。

この韓国経済の後退と、米軍の撤退が重なっている状況を反対側から見ると、北朝鮮にとっては悲願の半島統一のチャンスであることは間違いないが、このチャンスに乗じたいのは中国である。
近年、南シナ海でフィリピンとにらみ合い状態が続いているが、太平洋側へ進出を図りたい中国にとって朝鮮半島はいわばアメリカに対するくさびのようなものである。
仮に米軍が撤退後、北朝鮮が大きく軍を動かした場合、侵攻する準備の段階で、朝鮮半島に異変アリと地域の治安維持を建前に共産党軍が雪崩れ込む可能性もある。
すると、日本海を挟んで日米に睨みを効かせることができるようになるのだ。
これは地政学上、中国がアメリカを追い出すことに成功したと言ってもいいほどの出来事になる。

世界的な不況がパワーバランスを崩すというたった1つのシンプルな事実(東欧編)

2014年、突如勃発したウクライナでの反政権側と治安部隊の衝突は、東西が分断するほど大きなものとなったことは多くの人々が知るところだ。
ただこの問題は突拍子もなく発生したものではなく、その問題は以前から存在していた。
ウクライナは西側が新欧米派、東側は親ロ派とくっきり別れており、首都があるキエフは西側、経済産業の中心は東側と入り組んだ事情がある。
そしてウクライナの産業を取り込みたいEU、親ロ派で独立してロシア入りを目指したい東側との思惑が爆発したのが今回の問題の簡単な原因になる。
アメリカがTPPで経済をブロック化することに対して、EUもまた自分たちの利益になるであろうウクライナも取り込むことで、経済を強化していきたい考えはあったが、民族的な問題が立ちはだかり思うようにいかないのが現在のウクライナの姿でもある。
そして親ロ派の後ろ側にいたロシアは、欧米側が手をこまねいているスキに民族保護を目的とした軍事介入が始まる。
もちろんロシアにとってはウクライナ東側の産業を手にしたいこともあるが、中国同様、ロシアにとって南側への国土拡張は悲願であり、第2次世界対戦時にソ連軍の軍事的要所となったセヴァストポリの併合を半ば強引に行った。
それでも東欧の経済圏を諦めない欧米側は、ドイツ領土内にある基地に核兵器を配備することを発表したが、先手を打たれたアメリカがとったギリギリの選択肢であることは間違いない。

世界中でイニシアティブをとられはじめたアメリカ

これらの事件が示すように、今のアメリカは旧東側諸国、共産圏に先手を打たれ始めている。
先手を打たれるだけならともかく、その打開策が見えてこないのが実情だ。
結局のところ、これらの原因は浮上しないアメリカ経済に起因するところがあり、TPPによるブロック経済を敷こうとしている思惑が各国にすけて見えてしまっているだろう。
「世界の警察」ではなくなったアメリカが待つシナリオは、世界を混沌に陥れるものかもしれない。

参考記事

フォーリン・アフェアーズ・リポート

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