ロシアがとったトルコへの経済制裁。両国が被る影響とは

発端…ロシア軍機によるトルコの領空侵犯と撃墜

ロシアによるトルコへの経済制裁は、対ISISへの空爆でシリアに向かう途中のロシア空軍の戦闘爆撃機「Su-24」が、トルコ領空を侵犯したとしてスクランブル発進したトルコ空軍の「F-16」によって撃墜されたことがきっかけとなって起きました。

ロシア側は領空侵犯の事実はないとして強い非難を表明。更には一連の非難声明の発表の中で、「トルコはISISと石油密売」をしているとの情報を暴露したため、内外から強い批判を受けることとなりました。
対するトルコ側も「領空侵犯の事実があったことは事実」とロシア側の発表に反論。ISISとの石油密貿易についてもエルドアン大統領は「事実無根だ」と反論。徹底的に抗議する構えを見せています。
国際社会はISISとの戦いだけではなく、トルコとロシアのいさかいの解決にまで関わっていられないとして「両国の冷静な話し合いによる解決を希望する」との声明を出すに留まりました。

制裁…報復措置として禁輸措置などの経済制裁

ロシア軍機撃墜事件から1ヶ月後の11月28日、ロシアのプーチン大統領は報復措置としてトルコへの経済制裁を行う大統領令に署名しました。
その内容はロシア・トルコ共同開発の凍結や、トルコ産農産物・食料の輸入制限に代表される輸出入禁止措置と決定されました。

  • 航空便の運航制限や共同の自由貿易区開設に向けた準備停止
  • ロシア産小麦は、最大の輸入国であるトルコへの新たな取引を中止
  • トルコ産農作物が基準を満たしていないとして、検査強化を指示

などが決定されました。
更にパイプラインや原発建設などのロシア資本によるトルコ国内の大型プロジェクトの制限の可能性についても示唆するなど、更なる経済制裁の実施も示唆されています。
これに対してトルコ側はエルドアン大統領が「感情的かつ不適切」と批判するなど、ロシア・トルコ関係は徐々にこじれつつあります。

影響…経済制裁による両国への影響はあるのか

ロシア軍機撃墜を発端とするトルコへの経済制裁は、両国にどのような影響を及ぼすと考えられるでしょうか。

2005年に通貨価値を切り替える「デノミネーション」を行なったトルコは、その後の経済成長には著しいものがあり、BRICs(Brazil, Russia, India and China = ブラジル、ロシア、インドと中国)に次ぐVISTA諸国(Vietnam, Indonesia, South Africa, Turkey and Argentina =ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコとアルゼンチン)として今後の成長が期待されている国家群の1つです。
そのためには国内の基盤整備が必要とされているため、特に近隣のロシアに技術協力と資金援助を頼むことで整備を進めてきましたが、今回の経済制裁によりその先行きは怪しくなっています。

経済制裁を行うロシア側にしても、対ISIS空爆という労多くして実入りの少ない軍事介入の真っ最中に、新たな火種を抱えこむこととなった格好です。
国際社会からは「対ISISを名目にシリアのアサド政権を支援するために武装勢力を攻撃している」という非難を受けているため、これ以上の非難は受けたくありません。そのために飴と鞭の両方を使ってできるだけ穏便かつ有利に問題を解決しようとしているものの、その効果は思わしくありません。

領空侵犯機の撃墜という偶発事故が発端でおこった経済制裁は、ロシアとトルコのどちらが折れるとしても、両国の関係にはしこりが残ります。
対ISIS作戦のあとも、シリア内乱の調停などで協力しなければならない場面が多く予想される中で、大きな障害となるかもしれません。

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